去りゆく友へのログポース

これは比較的最近、私の勤務する工房を訪れたお客様とのやりとりと、製作の様子です。

DIY業界全体の中のウチの工房の立ち位置や私のスタンスがよく現れていると思います。

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三日前、工房にお客様。
見たところ二十代前半くらいの若い男性。

 

「あの、、ちょっと相談させていただきたいことが、、、」

 

はいはい、何でもお聞きしますよ。

 

「、、、こういうものを作りたいのです、、、」

 

スマホを私に差し出して、画像を見せてくれました。

こ、こ、、、これわ、、、

 

ログポース、、、、

 

 

ログポースとは、あの国民的名作『ONE PIECE 』に出てくるアイテムで、リアル世界における羅針盤のようなもの。大海原を航海するものにとって無くてはならぬ、これがなければ次の島へも辿り着けない最重要アイテムである。
(『ログポースを疑ってはいけない。これは鉄則よ、航海士さん』by Nico Robin)

 

↑の画像は今私がテキトーに拾ったものだけど、お客様が持参なされたものは画像のような腕時計型ではなく、砂時計のような飾り柱をもつ、据置型でした。

 

 

このタイプのログポースの画像を探したけど、既製品はおろか画像ひとつ見つからない。

そういえばお客様が持参なされた画像もどうやらビデオのキャプチャーだったなぁ。

 

どこにも売っていない。
ならば、作ろう。
そうおもったんだなぁ。

 

素敵だなぁ。

 

私「これを作る上で一番ネックになるのは、この飾り柱でしょうね。無垢材からこれを削り出すには木工旋盤という工作機械が必要ですが、残念ながらウチにはありません。加工済みの飾り柱も取り扱いがございませんし、、、」

 

お客様「どこに行けば、こういうのは手に入るのですか?」

 

私「木工旋盤を備える製材所にオーダーするか、、、あ、そういえば三宮の東急ハンズさんでこういうのを見かけた気もします。一度、電話で確認されてみては?」

 

他人のふんどしで相撲を取る形になって申し訳なかったけど、ウチにないものはしょうがない。

 

お客様「明日にでも東急ハンズに行ってみます。仮にこの飾り柱が手に入ったとして、またここで制作させて貰ってもいいですか?僕、こういうの全然経験ないんだけど、、、」

 

私「いつでもお越しください。ちなみにこれ、ひょっとして贈り物ですか?」

 

お客様「はい。遠くに転居する親友に、と思って、、、」

 

私「素敵ですね。それで、転居は、いつ?」

 

お客様「10/1です。なんとかそれまでに、、」

 

私「!?」

 

、、、三日しかないじゃん、、、

 

 

そして、二日後。

 

お客様「鳥井さん!飾り柱、東急ハンズにありました!!!」

 

さすが東急ハンズ。おそるべし。

 

球体部はガチャのカプセルを流用、羅針はコンパスを分解し、針金で吊るす目論見だそう。

うん、いける!

 

早速当店の売り場からしっくりくる素材感のプレナー材を選んで頂き、制作スタート!

 

このお話があった二日前から、制作段取りのイメージは考えていました。

 

天板と底板となる円盤は直径100mm程度。これは自在錐とボール盤で切り出せるだろう。中央に空いてしまう穴は丸棒材で塞ぐ。切り出した円盤のポーズ面取りはトリマー。これは手持ちよりトリマーテーブルで作業して貰った方が安全で簡単だろう。
飾り柱は三本。分度器で120度×3を正確に墨付けし、ガチャカプセルの直径を写した型紙を作って中心点と柱位置を確定。天板と底板に柱固定用の丸ホゾ穴を掘り、ガチャカプセルが丁度収まるよう飾り柱を切断し、端を削って丸ホゾに加工。

 

うん、行けそう。

 

そして作業すること、約2時間。

 

 

形になった!

 

あとはガチャの中に羅針を仕込み、木部を塗装し、木工ボンドで圧着すれば、出来上がり。

塗料には手軽に塗れて失敗の少ないビンテージワックスからお好みの色を、そして羅針盤部作成には、面と点の接着を多用する事になりそうだから、通常の瞬間接着剤よりそれに適したボンディックをお勧めしました。

 

 

お客様「底板の側面に、あいつのふるさとであるこの街の名前を彫り込むつもりです。お前が何処へいっても、俺はこの街にいるからな、いつでも戻ってこいよ、って」

 

おいおい、51にもなる初老オヤジを、泣かすんじゃないよ。

 

何を隠そう、私もまた無類のONE PIECEファン。それこそ、そのお客様が生まれる前からの。

 

受け継がれる、意思。

 

『超えて行け、己が信念の旗のもとに』
(by Goal.D.Roger)

 

 

この制作をお手伝い出来たことは、きっと生涯、忘れません。

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