同好会プレ企画・とりいによる実演会〜ロイヤルホームセンター西宮中央


2019年10月、同好会設立のためのプレ企画として実演会を行いました。

 

場所はロイヤルホームセンター西宮中央。

 

『ノコギリ木工』とはどういうものか、百聞は一見にしかずという訳で、ひとまずわたくしとりいが実演させて頂きました。

拙いながらも、なかなか充実した内容にできたのではと思っています。

 

とりいの旧ブログからこちらにお引越し転載しておきますね。

1 『ビス組と木組』

まずは、『ビス組』と『木組』について。

なぜ私たちは、手間暇かけて『木組』にこだわるのか。

20191022074350af2.jpeg

右がビス組、左が木組。
材料はいずれも30mm×25mmのパイン集成材。
ビス組の方は75mmのコーススレッド2本をインパクトで打ち込んであります。
木組の方は三枚組接ぎに6mm丸棒でかんざしを仕込んでいます。

当日参加者のうち一番腕力のありそうな男性に、この2つを「壊してみてください!」。

20191022074459186.jpeg

ビス組の方は案の定、僅か30秒ほどグニグニやるだけで、このありさま。

 


20191022074601d7a.jpeg一方の木組は、微動だにせず。

『木組』は、ビスを使わないから、凄いんじゃない。

ビス組では決して成せない、構造力学的な理にかなった、強靭な結合が可能になるから、凄いんです。

ただカッコいいだけのケレン味、凄腕のひけらかしを求めてのええかっこしいでは、決してないのです。

 

 

 

 

 

 

 

 


2 『ノコギリ木工』って?

『ノコギリ木工』って、少し変わったネーミングです。

まるで頭が頭痛、みたい。

『ノコギリ木工』もなにも、木工ってそもそもノコギリ使ってやるものではないの?

、、、という違和感を覚えると思います。

大工さんとか、家具職人さんとか、建具屋さんとかの、現在の作業現場の様相をご存知ない人達は、特に。

実は、ノコギリって、あんまり使われていないのです。

あるのは、丸ノコ、サーキュラソーテーブル、昇降盤、角のみ盤、トリマー、ルーター、自動かんな盤などなど。

そういった電動工作機械の数々。

本職の職人さんたちは、仕方がありません。

なにしろ彼らには、納期があります。

一本でも多くの仕事をこなして、お金にしなきゃ、生きていけない。

では、本職ではない趣味の木工ファンの方々は?

実は現在、その人達の作業部屋もまた、各種電動工具で埋め尽くされているのが普通です。

電動工具は、仕事が早い。
職人さん達が電動工具を使う理由はこれです。

でも、もうひとつ。

電動工具は、正確。

本職ならぬ趣味人までが電動工具に手を出すのは、実はこちらの理由の方が大きいようです。

ノコギリでまっすぐ切れないから、丸ノコを使う。

ノコギリやかんなで正確な段欠きが出来ないから、トリマーを使う。

ざっと一式100万円くらいの機材費と、それを備え付けられて、電動工具のあの騒音と粉塵にまみれながら、それが許される作業現場を確保して。

これまでは、それが出来るくらい恵まれた環境を準備できる人しか、実は木工を趣味にさえしてこられなかったのです。

そこで、『杉田式ノコギリ木工』なのです。

201910220832568e7.png
201910220750385d9.jpegアサリなしノコギリとマグネットシートを活用する、創意工夫の塊である各種ジグ類を活用することにより、電動工具を凌駕する精確な木工が、手工具で可能になるのです。

1で紹介したビス組は、3分で出来ました。
木組みの方は、丁寧に作業して、30分かかりました。

ビス組の10倍の手間暇をかけて、ビス組ではなし得ない物をつくる。

その手間暇そのものを、心から楽しみながら。

そういう、「上質な趣味」としての木工を可能とするのが、『ノコギリ木工』なのです。

 

3 同寸切り出し

さて、前口上はこのくらいにして、実演に入っていきます。

ご覧頂くのは、留接ぎによるフォトフレーム制作。

20190524120412af0.jpeg

留接ぎを精確に行う為の条件は、みっつ。

その1・縦横それぞれ框の長さが同寸であること。

その2・接ぎ合わされる2つの角の合計が90°であること。

その3・切断面が垂直であること。

この3つをクリアすれば、隙間のない精確な留接ぎとなります。

まずは、同寸切り出し。

「そんなの、ホームセンターのカットサービスでいいじゃん。」

確かに、ホームセンターに備えてあるパネルソー は、かなりの精度で同寸切り出しを行えます。

でも、切り口は、かなり荒れてしまいます。

盛大に出てしまうバリを落としているうちに、せっかくの精度もまた狂ってしまいます。


そこで、まずは『直角ジグ』と『ストッパー』。

201910220906110fb.jpeg

200-150程度のランバーコア材の木端面にマグネットシートを貼り、スコヤを使って直角にフェンスを仕込みます。


201910220910267be.jpeg

ジグをテーブルにクランプで固定し、材の基準面をフェンスにあてがってこれもクランプします。
あとはアサリなしノコギリをマグネットシートに貼り付け、そのまま切り落とすだけ。

変にノコギリに力を入れてこじったりしなければ、ノコギリはそのまままっすぐ垂直に進んでいきます。


同寸切り出しのポイントは、この自作ストッパー。

20191022091417aa6.jpeg

このようにセットする事で、2本目以降の材もすべて同寸に切り出す事ができます。

つまり、パネルソー など工作機械でやっている事を、そのままノコギリでもやれる様にしているのです。

それでいてアサリなしノコギリの切断面は、丸ノコより遥かに綺麗。
なんらかの不手際(材をクランプする時にズラしてしまう、など)がない限り、もうカンナによる仕上げとか修正とかも不要です。


4 留切り

さて、框の同寸切り出しが無事成功したところで、次はいよいよ留切りです。

 

《注・重要》
以降、私が使う「可動フェンス型留切りジグ」は、厳密にいうと『杉田式』ではなく、アサリなしノコギリとマグネットシートを使う杉田氏のアイデアを借用しつつ私が考案作成したものです。

 

何故それを声高に申し上げるかというと、自慢したいからではなく、『杉田式』の価値を貶めない為です。

この「可変式」のアイデアは、私以外にもたくさんの人が思いつき、すでに実行しています。

しかし、このアイデアだけでは機能に限界があります。

具体的には、『留切りからのイモ接ぎ』は可能でも、『留型三枚組接ぎ』や『隠しホゾ留接ぎ』は、不可能です。

201910220933258ec.jpeg

 

20191022093352645.jpeg

この2枚の画像は、今回使う「可変式」ではなく、『杉田式留切りジグ』を用いて私が制作したものです。
『杉田式』ならば、ここまでの加工が可能となるのです。

しかし、この『杉田式留切りジグ』は、そのジグの制作そのものがかなり難しいという事と、「可変式」を使った阿呆留による框の幅調整の様子も今回実演したかったので、あえて今回は「可変式」を使用します。

 


20190524114002016.jpeg

ランバーコア材の90°角に隣接する2辺にそれぞれマグネットシートを貼り、可動フェンスをあつらえてあります。

20190524115124dff.jpeg

 

2019052411514457e.jpeg

3と同様に、ストッパーを駆使してそれぞれの框を留切りしていきます。

可動フェンスの一方が60°なら、もう一方は必ず30°になります。
2つの角の和は、必ず90°になります。
ピタゴラス先生の言う通りです。

そして、同寸から同寸を切り出せば、必ず同寸が残る、という理屈です。

2019052411542525b.jpeg

5 幅ぎめジグと西洋かんな

留切りの角度が45°以外の「阿呆留」の場合、框の幅調整が必要になります。

2019052411564989b.jpeg

普通のノコギリでざっくり粗切りした上で、杉田式幅ぎめジグと西洋かんなブロックプレーンを使って、幅を決めていきます。

「かんな」というと、「表面をツルツルに仕上げる為のもの」と思い込んでいる人が多いのですが、実はこのように、粗切りした材を少しずつ少しずつ削って、求める形、求めるサイズに擦り寄せていくために使う局面の方が、遥かに多いです。

そして、この目的で使うかんなとして、この『リーニールセン・ブロックプレーン』は最高に使いやすいです。

本体が金属製で堅牢、刃も研ぎやすい。
しのぎ面がすっきり平らに研げるので長切れするし、少し鈍ったなと思えば、またすぐ研ぎ直せる。

特に初心者や独学独習者にとって、100%の信頼をおける道具、これでダメなら俺がヘタなだけ!もっと練習しよ!!と思える道具って、本当に大切だと思うのです。


6 段欠きジグ

框の加工が終われば、次は段欠き。

フォトフレームなんだもの、やっぱりガラスやアクリル板そして写真やハガキと裏板を落とし込む段欠きは、欲しいよね。

201905241158478b6.jpeg

こんな感じです。

なんのことはない、一枚の板に材を置ける棚板を仕込んで、求める段欠きの幅に合わせたマグネットシート付きスペーサーを両面テープで貼っただけのもの。

アサリなしノコギリには、切り込みの深さを設定するべく、真鍮材を貼ってありますが、アイススティックでも充分です。

これで框の裏面と内面からそれぞれ切り進んで行くだけです。

こんなので、あっという間に、段欠きできちゃうんです。

トリマーなんてわざわざ出してこなくても。

木屑まみれ騒音まみれにならなくっても。


7 ちぎり加工

さぁ、段欠きが済めば、木工ボンドを塗って、圧着。

ベルトクランプでいくもよし。
フレームクランプを奢るもよし。

でも、ここまでの加工が精度よく出来ていれば、輪ゴムやパンツのゴムでも充分です。

20190401171707021.jpeg


そして、待つこと一昼夜。

ボンドがしっかりかたまったら、ちぎりを入れて補強しておきます。

2019102210230698a.jpeg

ここで登場するのが、『杉田式・新型縦挽きジグ』。

これを使って、まずは框の裏面から2ミリの所に、切り込みを入れていきます。

「ノコギリで木端から2ミリの所に、しかも縦挽きでって、、、。
そんなん、神業宮大工にしかでけへんやろ!!」

いやいや、このジグがあれば、造作なく出来ちゃうんです。

 

20191022102730a97.jpeg

出来ちゃいました、の図。


次に、使うちぎり材と同じ幅の所にもう一本切り込みを入れます。
ちぎり材は厚み約5ミリの黒檀。

20191022102927a7a.jpeg

「約5ミリ」なので、正確に5ミリではない。
なのでここでは、実際に使うちぎり材をそのままスペーサーとして使います。

ただし、このまま材をクランプして切り込みを入れると、その幅は「ちぎり材+ノコギリの厚み」になってしまう。

なので、使うノコギリと同じものを、材をクランプする面に貼り付けてあります。

これで、切り込みの幅はぴったりちぎり材と一致します。


201910221033297af.jpeg


無事二本の切り込みが入れば、あとはノミで払って、ちぎりをボンド塗って仕込み、乾いたら不要部分をノコギリとかんなで払えば、出来上がり!!

20190524120412af0.jpeg

ちなみにこの作例は、この後かんなでかるーく外向きのベベルに整形しています。

もし内向きベベルに仕上げたいなら、框を組む前に加工すると良いです。

と言うわけで。

私が『ノコギリ木工』に出会ってから、ひとりコツコツホクホクと楽しく修練してきたそのほぼ全てを2時間に詰め込んだ、関西ノコギリ木工同好会プレ企画実演会でした。

関西近隣にお住まいで興味を持たれた方は、ぜひ一緒にやりましょう!

同好会は、いつでもあなたをお待ちしています!!

コメント